擁壁でよく起きるトラブルには、どんなものがありますか?
擁壁でよく起きるトラブルをご紹介します。
隣人トラブルの原因になりやすい擁壁(ようへき)
造成した地盤が崩れることを防ぐために設置する擁壁は、公道に面している場合はトラブルに発展することはほとんどありませんが、隣家との境界に設置されている場合は、思わぬトラブルが生じることがあります。
越境の問題
擁壁にはさまざまな種類がありますが、地表に出ている壁の部分は敷地内に収まっているものの、地面の下にある「基礎」の部分が境界を越えて侵入している、傾斜がある擁壁のうち、張り出した下部が越境している、擁壁自体が境界線上に設置されているなど、擁壁の一部が隣地との境界を越えている場合、その所有権と管理責任を巡って問題が起きることがあります。
例えば、敷地内に擁壁の基礎が侵入している場合、建てる事ができる家の大きさなどに制約が出来てしまいますが、自分の敷地内にあるとしても、取り壊しや撤去などを行うことは安全上できません。
越境しないよう、基礎部分も含めた擁壁全体が敷地内に収まることが理想ですが、擁壁を設置する斜面の向きや、擁壁の設置義務がどちらにあるか、擁壁の形状などによっては、擁壁全体を敷地内に設置したことで土地の有効面積が大幅に減少してしまいます。
管理責任と補修工事の問題
擁壁は地盤が崩れることを防ぐ目的で設置される構造物ですので、亀裂が入ったり、一部が崩れている場合、地震や大雨などに耐えることができず地盤が崩れ、上の土地に住んでいる人は家屋の倒壊、下の土地に住んでいる人は土砂災害に見舞われるといったことになりかねません。
そのため、擁壁は亀裂が入っていないかなどを定期的にチェックし、問題がある場合は補修などを行わなくてはなりませんが、擁壁の補修工事は費用が高く、所有者だけでは負担することができないこともあります。
補修費用が払えないという理由で問題のある擁壁を放置していると、双方にとって危険が及ぶため、擁壁が越境していない場合でも、擁壁を所有していない側がいくらか費用を負担することが多いのですが、費用分担を巡ってトラブルが生じることもあります。
擁壁を設置するときは隣家と相談する
擁壁を設置する必要ができたときは、設置する前に隣家としっかり相談しておきましょう。
基礎部分も含めた擁壁全体を敷地内に設置すると土地面積が大幅に減少してしまうといったケースも、基礎部分の越境を認めてもらうなど、隣家の協力があれば解決することができます。
また、補修が必要になった際の費用負担の割合なども、擁壁を設置する前に決めておくことをおすすめします。
まとめ
擁壁のトラブルは、設置してすぐではなく、擁壁の補修や家の建て替えなどが必要になる10年後、20年後、あるいはそれよりもずっと後になってから起こることが多く、問題になった時点で「誰が所有者か」が分からないということも珍しくありません。
さらに、設置したときは良好だった隣家との関係が悪化している、そもそも住人が変わっているなど、設置する前とは関係性が変わっていることもあるため、擁壁設置の際は「擁壁の所有者」「擁壁の管理」「擁壁の補修費用」などの取り決めを書面に残しておきましょう。
また、まだ土地を購入していないという場合は、擁壁の設置が必要な土地や、擁壁が設置されている土地は購入しないという選択肢もあります。