火災保険の補償額、国や自治体からの補助金などに差が出る。床下浸水と床上浸水、何が違うの?
増加する浸水被害
近年、ゲリラ豪雨や大型台風の発生が増えており、川が氾濫したり排水機能の許容量以上の水が流れ込んだことで、下水が溢れる都市型洪水が発生するなどの水害も多く起きています。
住宅浸水には「床下浸水」と「床上浸水」の二種類がありますが、実はどちらに当てはまるかによって火災保険の補償や自治体などの補助金に差が出ます。では、「床下浸水」と「床上浸水」の違いは何でしょうか。
床上浸水と床下浸水の定義
床上浸水と床下浸水の違いは、字のごとく、建物の基礎や地下スペースなど、一階の床よりも下に浸水することが床下浸水、一階の床よりも上まで浸水することを床上浸水と言います。
数字としては「水深50cm未満は床下浸水、水深50cm以上は床上浸水」と定義づけられていますが、これは建築基準法で基礎の高さは地盤面から30cm以上と定められており、防湿性や防蟻性の確保のために45cm程度で作られることが一般的であることから決められています。ただし、基礎の高さによっては50cm以上でも床上浸水しなかったり、40cm程度の水深でも床上浸水したりしますので、水深は「一般的な目安」と考えておくとよいでしょう。
補償の違い
火災保険は火災だけではなく、台風・暴風雨・豪雨などによる洪水も対象としているため、浸水被害に遭ったときは補償を受けることができますが、水災補償は一定の支払い基準が定められており、浸水被害があったから必ず補償されるとは限りません。
支払い条件は、保険会社などによって異なりますが、一般的には「建物・家財の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合」か「床上浸水または水深45cm以上の浸水」のいずれかを満たす場合だけが補償対象となっており、この基準を満たさない場合は補償対象になりません。
そのため、床下浸水の場合は補償されないことがほとんどで、床下浸水でも水深45cm以上で床の断熱材が濡れてしまったり、床下浸水も補償を受けられる特約を付けていたりしないと補償が受けられません。基本的には「火災保険が利用できるのは床上浸水だけ」と考えておくとよいでしょう。
国や自治体などによる補助金・助成金は、半壊以上を対象としていることが多いため、床下浸水で公的支援を受けることはほとんどできません。床上浸水の場合でも基準を満たしていなければ支援の対象外となります。
ただし、自治体によっては床下浸水でも補助金を受け取れる制度を設けている場合があります。
また、風水害、落雷、雪害、震災、火災などで被害を受けた場合に所得税の控除を受けられる「雑損控除」は、床下浸水でも受けられるため、火災保険の補償や公的支援を受けられない場合でも罹災証明を発行しておくとよいでしょう。
まとめ
水災補償は火災保険に入ればついてくるというものではなく、補償をつけるかどうかは任意です。そのため、火災保険に入っていても水災補償を付けていなければ床上浸水であっても、補償を受けることはできません。
また、火災保険は「建物」「家財」「建物と家財」の3種類があり、建物にしか保険をかけていない場合は家財の補償を受けることができません。
何気なくつけているだけでは補償が不足していたり、掛け金が無駄になっていたりしますので、お住いの地域のハザードマップや過去に起きた水災などを確認して自分に合った補償を選ぶようにしましょう。